第2024話:クラウ・ポニカ~腐食の沼~
「臭い……」
腐った沼地を調べないといけなくなってやってきたのだが、思ったよりも厳しい環境だった。
マスクをしていても貫通してくる臭気に湧いている強酸性の液体、漬かればあらゆる物体が腐食して使い物にならなくなる、そこで生きているものなど何もいないような最悪の土地だ。
そんなところに何を調査しに来たのかと言えば、最近いろんなところで暗躍している犯罪組織の拠点がこの辺りにあるのではないか?という推察からだ。
なんでも犯行現場にこの沼由来の酸が付着していたという話で、あらゆる物を腐食させるこの沼の液体を使えば様々な物理錠は意味を成さないだろうし、無い話ではない。
「とはいっても、こんなところに拠点を構えられるとは思わないけどなぁ……」
それこそあらゆるものを腐食させる沼地だ、建物を建てられるような地盤は無く、今歩いている外周ですら踏み場を間違えれば地面は割れて沼地の中に落ちそうだ。
そもそも、あらゆるものを腐食させる液体を汲んで持ち歩けるボトルなんて物も存在しないだろう。
気乗りしないのもそのあたりの理由。
この調査は結果の予想ができてしまうのだ、無駄足で危険があるだけの無意味な調査。
そんな調査に駆り出されるとは私も軽く扱われているものだ。
どうにかしてここの酸を持ち帰って本部でぶちまけるなりしてやりたい気分だが、そんなことができたらここの酸を持ち帰れる入れ物があることになり、この調査の有用性の証明になってしまう。
ジレンマだ、これはジレンマだ。
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