第2000話:マレ・ポンド~空箱~

「ん、何その箱? 何が入ってるの?」

「何って、ただの空の箱だよ」

「ただの空の箱ならそんな風に大事に抱えないだろ?」

「まぁ、て私そんなに大事そうに抱えてた?」

「うん、まるで絶対に人に取られるわけにはいかないみたいな感じの抱え方だったよ」

「うーん、全然そんな気がしない……」

「で、その箱はどうするつもりなの?」

「えーと、持って帰ってしまっておこうかなって思ってるけど」

「ただの空箱を?」

「え、うーんまぁそうだけど」

「なんかおかしくない?」

「え、何が?」

「大事な箱なの?」

「いやぁ、別にそういうわけじゃなかったはず……」

「もしかして何か呪われてる?」

「え、」

「そのただの空箱を君は大事そうに持っているってのはおかしいだろ。ちょっとその箱見せてみろ」

「え、嫌だけど」

「ただの箱なのに強情になりすぎなのよ! ちょっとよこしなさい!」

「いやだってば!」

「うおー奪取!」

「あっ! 絶対開けないでよ」

「いいや! 開けちゃう! ……て、あれ? 本当にただの空箱だし、変な呪いの気配もしない……ねぇ、これどういう箱なの? ただの箱じゃないことはわかってるからもうごまかさないでよ」

「この箱は開けずに一年置いておくことができると中に欲しいものが入っている状態になるっていう箱だったの。それを誰かに言うと奪われることもあるって聞いてたから言わなかったんだよ! ようやく手に入れた箱だったのに!」

「うーん、でもこの箱そういう魔術がかかっていた気配が一切ないいし、たぶん偽物なんじゃない? これいくらで買ったの? 空箱詐欺じゃない?」

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