第1984話:メラカ・ケーシ~治水~

「ここに村があったのか?」

 先日、洪水に飲まれて消えた村があるという報告を受けて調査に来たのだが、その場所には村があった痕跡など何も残っていなかった。

 谷の間にあったらしいその村は、大雨の際に上の方にあった大河の決壊によって発生した洪水で全てが流されてしまったという話だった。

 その村の者の一人がちょうどそのタイミングで外に出ており、無事だったのだが村に帰ってみると跡形もなくなっており、あらましを報告に来たということだった。

「しかしなぁ……」

 地図を見てもそこに村があったという記録は無く、彼が存在しない村に帰ろうとする脳の病気か、何らかの理由で俺を騙そうとしているか。

 それか場所を勘違いしたとかその辺りしか考えられない。

「しかたない、とにかく流された残骸を探そう」

 村が丸ごと流されたというのならば壊れた建物の残骸が見つかるかもしれない。

「あっちに流されたはずだ、谷が広くなってる辺りになら少しぐらい残骸が残っているだろう。もしかしたら生存者もいるかもしれない」

 何か見つかれば彼も納得するだろう、そこに希望があるか絶望があるかは知らんが。


「あるじゃねぇか」

 下の方を探していたところ、村が見つかった。

 やっぱりただ場所を勘違いしていただけだったようだ。

「しかし、妙な形の村だな、まるで……」

 大きな台を作ってその上に構築された村は、でかい船が座礁しているようにも見えた。

「まさか……船の上に村があって、洪水で丸ごと流されてきたのか……?」

 それならば固定された位置ではないから、地図に載っていないのも納得だ。

 納得か……?

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