第1966話:リチャープ・フォップ~木~

「この木、妙じゃないか?」

「何が妙なの? ていうかこんなところで時間取られてたら次の町まで今日中に着かないよ」

「別にそれはいいんだよ。知見を広げる旅なんだから。道中で見かけた不思議な物は確認していきたいだろ?」

「うーん、まぁそうかもしれない」

「それはそうとしてこの木だよ。こんな荒野に一本だけ生えてて、妙に青々として元気なのは妙じゃないか? ここいらは他に草一本生えてないんだぜ?」

「確かに……この木がこの土地の栄養をすべてを奪ってるとかじゃない?」

「そういう話、神話とかで聞いたことがあるな……国を枯らすやべぇ木があるっていう」

「国を!?」

「神話では常に神が使徒を使って芽が出た時点で摘むようにしてたぐらいヤバい木だとされていたが……まさかそれか? 神話ではそうやって摘まれてたとしたらこの世界にいくらか存在しててもおかしくないし、この世界では誰も摘まなかったらこうやって育って荒野が生まれてると考えるとおかしくはないか……」

「まぁこの木が神話のその木かどうかは定かじゃないけどね。もしかしたらこの木が栄養を溜めてるとしても、枯れた後にはこの地に森ができるかもよ?」

「確かに……」

「今伐って木材にするのはあんまりいい考えじゃないと思うなぁ僕は」

「いや別に俺も伐って木材にしようとは考えてないけどさ、まぁそういう木かもしれないってことをメモして今日はここでキャンプにするか。どうせ先に進んでも町には着かないし、せっかくだし木の影でキャンプしよう」

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