第1965話:ルシー・カプリ~世界のどこへでも~

「この扉は全ての扉に繋げることができるんだ」

 案内された先の部屋で、自慢げに見せられたのはありふれた木でできた扉。

 真鍮製の取っ手はあまり磨かれていないのかくすんでいる。

 しかし、言われた内容は荒唐無稽と言わざるを得ない内容だった。

 つまりどこでもドアのようなものということだろうか。

「例えば?」

「そうだな、こことか」

 扉を開けると自分たちの背中が見えた。

 この部屋に入ってきたときに通ってきた扉がこの扉とつながったということらしい。

「この程度ならあらかじめ仕込んでおくぐらいできます」

「そうかい? まぁ手元で証明できるからとここに繋いだんだが……そうだなわかりやすい証明方法なら……君の家に繋いでみよう」

「できるのか?」

「鍵がかかっていなければね」

「じゃあ無理だ。私は家を出た時に鍵を掛けてきたからな」

「玄関は、だろ?」

「どういう意味だ?」

「つまりこういう意味さ」

 扉は開き、その先は私の部屋だった。

「この扉は……そうか!」

「そう、これは戸棚の扉さ。言ったろ? 全ての扉につなげることができるって」

「なんて扉だ……」

 この扉があれば、この世界のありとあらゆる秘密の空間にアクセスすることが可能じゃないか。

 何にでも使える、そう、なんにでも……

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る