第1920話:テライ・ナマリア~横画面~

「ん、今日はいつもと少し雰囲気が違うな。なんだか、広いような気がする」

「ああ、今日から横画面に対応したんだ。だいぶ広く使えるようになっただろう? 前は天井が高かったが、床面積は狭かったからな」

「ああ、代わりに天井が下がったのか。まぁ、これぐらいの高さでいいのかもな。前は高すぎたかもしれない……って、横画面? 画面ってなんだ」

「もしかして知らずにここを訪れていたのかい?」

「何が?」

「ああ、どうりで。なかなかここを訪れるもの好きなどいないものだからな。知らなかったのなら仕方ないが……入口に注意書きなどは無かったかな?」

「何か書いてあった気がするけど、俺は文字が読めないからな」

「あぁ、それなら仕方ないか。ここはさ、常に様子が配信されているんだよ」

「配信?」

「そう、携帯端末デバイスは持っているだろう? それでこのコードを読み取ってみるといい」

「えーと、どうするんだったか」

「貸してみるといい、こうするんだよ」

「お、読めた。えーと、俺が写ってますね、テライさんも」

「そう。これはさっきのコードを読めば全世界誰でもこの部屋の様子を見て聞くことができるのさ」

「え!?」

「ここはそういう監獄なんだよ。私は出入りはできないが、客人は出入り自由だ」

「なんか悪いことした人なんですか?」

「まぁ、昔にね。今はここで反省して残りの余生を過ごすつもりだよ。それより、君はまだここにいるのかい?」

「あ、お邪魔でしたか?」

「いや、邪魔というわけじゃあないんだが、ここでの一挙手一投足は世界に対して晒されているんだぞ? 気持ち悪いとは思わないのかい?」

「別に? 配信なら普段からやってるし、俺は別に見られて困ることとかないからな!」

「そうか、そういうもんなのか」

「しかし、配信が横画面に対応してなんで部屋の形が変わるんだ?」

「それはここが配信画面の中という監獄だからさ。配信プラットフォームのアップデートの影響を受けるということだね」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る