第1921話:ハラベ・フラーフ~化石~

「化石ねぇ……」

 研究所に持ち込まれたのはとある化石。

「時代の特定はやはり困難ですか」

「この世界は地質もわからないことが多いし、生態系も混沌を極めている。物性も未知のものが毎日のように発見される状態だ。だから、まぁ、期待しないで待っていてくれ。わかる範囲で調べてみようと思う」

「ああ、ありがとう」

 さて、どうするか……

 物質自体に刻まれた時間情報を読み取ることもできるが、それで読めるのはその物質が元はいつにこの世界に出現したのかを図ることぐらいしかできない。

 まぁそれを使えばこの生物がいつの時代の生物なのかはわかるか……

「だいたい20万年前にこっちに来た生物のようだね」

「おー、わかったんですね!」

「まぁ、大体の範囲でね。しかし、年代特定なんてしてどうするんだい? 博物誌を書くにしては少々この世界は複雑すぎる。一生をかけても編纂など終わらないよ」

「いやいや、個人的興味ですよ。ただ化石を手に入れたので、詳しく調べて見たかったんです。何の生物なのかとか、復元とかできます?」

「まぁ、見たところエビだね。20万年前のエビ」

「エビかぁ……確かにそんな感じの顔をしているかも」

「まぁしっぽ辺りの化石だけどねそれ」

 顔はないが……と思わなくもないが、それらしい雰囲気を感じる程度のことで言っているのだろうか。

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