第1908話:アラビ・リューガン~歩数~

「歩けど歩けど歩数計のカウントが増えないんだよ~!」

「歩けど歩けどって言ってるけどお前、脚がないじゃないか」

 なんかよくわからないことをぼやいている友人は脚がない。

 そういう種族って言うか、そういう世界の人だ。

 移動するときはスイーっとスライドするように移動する。

「その歩数計は歩いたときに発生する振動を検知して歩数を数えているタイプだから、お前のようなスライド移動タイプのやつとは相性が悪いんだよ」

「えー! どうしよう、今やってるゲームとこの歩数計が連動してて歩数を稼がないとアイテムが手に入らないのに!」

「そういう時はこうやって、手で振る」

「すごい! 歩数がカウントされて行ってる!」

「俺も昔そういうゲームをやったことがあるからな、インチキの方法はいくらでも知ってるさ。あの頃は子供だったし、いろいろ考えたもんだよ」

「え、インチキなの?」

「ん、まぁそうだろう。歩かせて健康にすることが目的のゲームで座って腕振ってるだけでカウント増えるんだ。インチキ以外の何物でもないだろ?」

「うーん、確かに……インチキはしたくないなぁ」

「じゃあ歩くときに大きく手を振って歩いたりすりゃあいい。そうすれば、歩くし歩数も増える」

「なるほど! それはいい」

「だろう?」

 そうは言ってみたものの、こいつの体で歩くことは健康にいい行為なのだろうか。よくわからない。

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