第1909話:ルル・アラバート~偽物が紛れる~

「今日はなんかいつもよりもにぎやかな感じがあるなぁ」

「確かに、こんなに人数いたっけ……?」

「いや、いないはずだ。この中に俺たちじゃない誰かが紛れ込んでいる!」

 定例集会、いつものメンバーが集まっているにしてはいつもよりも部屋が狭いように感じる。

 しかし、見知らぬ人間は一人も見当たらない。

 どういうことだろうか……

「何かがおかしいような気がするが、なにがおかしいのかは全くわからない。妙な気分だ……」

「確かに……」

「もしかして、同じ人が二人いたりするんじゃないか?」

 突飛すぎるが、知らない奴が一人もいない込み入った空間で人数が想定よりも多いということは、知っている奴が重複して存在しているということに他ならない。

 この込み具合だ、その重複している二人が同時に視界に入らないということもあるだろう。

 つまりはその重複している奴を探し出せばそのどちらかが忍び込んだ偽物ということになる。

 しかし、この人数だ。

 忍び込んでいる奴も結構な数いそうだし、俺の偽物も紛れ込んでいそうだな……

 上手く俺からは隠れているようだが……

「俺以外の俺を見たら偽物だから先手を取って殴るんだぞ」

「わかった。ん、あれは……?」

 何かに気づいたように人の間を縫ってどこかへ行く。

 すると反対側から戻ってきた、変な動きをするなと思って見ていると、いきなり殴られた。

「この偽物がぁ!」

 その場の注目を集める。

「俺は偽物じゃねぇ!」

 どういうことだと聞いてみると、向こうの人の向こう側で先ほどしたのと同じ会話をしたという。

 別の方向から戻ってきたから偽物かとも思ったのだが、これはいったいどういうことか……

 空間がループしているとでも言うのだろうか、普段通りの広さの会議室のような気もするが……

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