第1900話:アパラ・チュアン〜練り物〜
「魚のすり身を練って固めた食べ物があると聞いてきたんだが」
お客さんの中には具体的な料理名はわからないが、探している特徴を伝えてくることがある。
その特徴だと……
「かまぼこですかね」
「これが……かまぼこ……?」
「はい、どうでしょう……?」
物を知らずに話だけ聞いて来たお客さんは実物を見てがっかりしたりすることも珍しくなく、出したときには緊張が走る。
「なんと酷いものを作るのでしょうか……」
あ、やばい。かまぼこを見て涙を流している。
魚に親近感を抱くタイプの人だったのかもしれない。
噂で魚を尊重しない食べ方をする店があると聞いたりして来たに違いない。
「厨房を借ります」
「えっ!?」
そのままお客さんは厨房へ押し入り、冷凍庫から魚を取り出すと見事な包丁さばきにより魚を捌き、すり潰し、なんやかんやの手を加えてあっという間にかまぼこを作り上げた。
「どうぞ」
差し出されたそれを恐る恐るひとつまみすると、うちで出しているかまぼこよりも圧倒的に美味いかまぼこであった。
「あんな酷いものを客に出してはいけませんよ、これがレシピです」
そう言ってデータを置いて、彼は去っていった。
うちのかまぼこは別に家で作ってるわけではないのだがと思わなくもなかったが、このかまぼこも一応メニューに加えることにした。
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