第1899話:マリバ・ライオウ~塔に閉じ込められて~
「このまま逃げちゃおうか」
空を歩いてやってきた彼はそう言った。
この窓からなら、閉じられ続けるドアと違っていつでも開いているこの窓なら、空を歩けるならば自由に出ていくことができる。
「その手を取れば、私もここから逃げ出せるということ?」
「そう、手を取って」
「いいなぁ~!」
「何が?」
「こういう、空を歩いて高塔の小部屋から助け出してくれる王子様よ」
「ほーん、夢見がちって成績表に書かれてた口?」
「もー、普通はみんなあこがれる物でしょうこういうの」
「まぁ否定はしないけど、あんまりそう物憂げに大きな声でため息をつきながら語るものではないと思うわ」
「それは確かに自分でもどうかとは思ったけど、そういうことを考えるのはいいでしょ」
「現実を見た方がいいわね」
「なにー?」
「そもそも塔の上に閉じ込められたりしてないじゃないか」
「確かに」
「しかもあんた、そういう環境で数日も耐えられるタイプじゃないだろ?」
「それもそう」
「そういう閉じ込められた系姫の元に王子様が助けに来るってシチュはみんな妄想するけど、助けられるほどピンチな環境にいないことがほとんどだったりするんだよね」
「なんか論破しなれてるね、もしかして昔そうやって論破されたことある?」
「……ある」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます