第1895話:ハラ・ミシード~隙間なく~

 道を遮るように壁ができている。

 一晩のうちに現れたそれは石を積んで作られており、その隙間の無さは見事の一言だった。

 壁は邪魔なのですぐに取り壊されると思うが、この素晴らしい石積みの壁は残しておいた方がいいんじゃないかとも思う。

 驚くべきことにこのきっちり隙間なく積まれているこの石たちは見たところ自然に形作られた物のようで、人為的に形を整えて切り出されてきたものではなさそうなのだ。

 ここまできれいな石積みができる者がこの町に存在するのであれば、それは一種の才能である。

 その才能をどこか別の場所で活かしてほしいものだが……


「ダメです! 壁破壊できません!」

「なにぃ!?」

 壊されるまで壁をしっかり見ておこうと近くでのんびりと見てると、壁を破壊しようとしている作業員が妙な報告をしていた。

 壁が壊せないという。

 あの壁は完璧な積み方ができているとはいえ、石を積んであるだけの石壁だ。

 破壊工具が揃っていて妨害する存在もいないのであれば、壊せないものではないはずだ。

 それともあの壁には見た目以上の何かがあって、破壊を妨げられているのかもしれない。

 あれだけ完璧に石を積める存在が、あんな場所にわざわざ壁を作るのには何か理由があって、それを通しきるために破壊できないような加工をしているのかもしれない。

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