第1894話:パチパチ・ラインボ~観戦~
「なかなか試合が始まらないな」
「何かトラブルでも起きてるのかな?」
だんだんと観客席全体がざわつき始めた。
それもそのはず、すでに試合開始時間を大きく過ぎていて、選手の入場すら終わっていないという状態だ。
そんな状態だから何か問題でも起きているんじゃないかと観客の皆が不思議に思うのも無理はない。
俺だって不思議に思っている、選手であるはずの俺がなぜ観客席に座っているのかと。
いや、逃げだしたとかそういうわけではない。
所謂、入れ替わりという奴だ。
フィクションでは何度か触れたことがあるが、まさか自分の身に起きるとは思っていなかった。
俺は今、一人の観客と体が入れ替わってしまっているのだ。
だから、俺の体に入っているのは一観客であって、そのためわたわたして入場が滞っているのだろう。
というか、一観客では闘うこともままならないだろう。
この体を見ればわかる。
戦いの心得がある体ではない。
もしかしたら、控室から逃げ出しているかもしれない。
まぁ、騒いでもどうにもならないし、どっしりとどうなるかこの観客席から観させてもらおう。
「いたぁ!」
ある意味で一番聞きなじみのない声。
「え、なんで!?」というざわめきが広まっていく。
そこにいたのは俺で、中身はたぶんこの体の持ち主なんだろう。
今まさに試合をほったらかしてる選手が観客席で声を上げたらそりゃあざわめく。
仕方ないと席を立ち、俺は逃げ出す。
俺が故意に試合をせずに隠れていたとなるとさすがに問題があるから、そうではないということにしたいからだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます