第1882話:テル・オイ~幻の町~
「昨日までこんなところに町なんてなかったはずだ」
「町はあったよ、ここではない場所にだけど」
「そりゃあここ以外になら町はどこにでもあるだろうよ」
「この町が、ここではない場所にあったのよ」
「移動しているってことかい?」
「ある意味ではそう。この町はここに有って、ここに無い、今もここに有るように見えて実はここにはないのかもしれない、そもそも実という物はどこにもないのかも……」
「なんだかよくわからないな……」
「そう、よくわからないんです。この町は」
「俺が言っているよくわからないのはこの町もそうだけど、君もだよ。君は誰なんだい?」
「私はこの町を追い続けてかれこれ14……いやそろそろ15年か。そう、15年間ずっとこの町を追いかけ続けて出現の記録をつけている、単純にこの町に興味があるだけの人よ」
「この町の住人とかではなく?」
「別に住んでいるわけではないわ。追いかけ続けているだけ」
「そうか……なんかさっきまでの神秘的な雰囲気どこ行ったんだい?」
「そりゃあ、雰囲気作りって奴よ。このどこにでも現れる不思議で神秘的な町を訪れた時に現れた女性、当然神秘的な雰囲気を持ってるに違いないわ」
「もういいのかい?」
「正体を聞かれちゃったからね、嘘をつくわけにもいかないしさ」
「変なところでまじめだな」
「仮にも研究者だからね。町のことで知りたいことがあれば教えてあげるよ」
「そうなのか、それじゃあ……」
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