第1881話:エル・フフス〜望んだ世界〜
「やぁ、はじめましてだね。ここは何でも望み通りのことが起きる世界さ」
「何でも望み通りのことが起きる世界……?」
ある時忍び込んだ施設で彼を見つけた。
「そう、僕はここにずっといて毎日好きな時間に好きな本を読んで好きなご飯を食べて好きな番組を見る、そして好きなだけ眠るのさ」
彼の生活を数日間観察していたところ、彼は驚くほどに一日が決まったルーチンで動いており、まぁこのものすごく時間に正確かつ栄養的に正しい食事がしっかり出てくる環境と彼自身の要求が完璧にマッチしているだけであることがわかった。
望み通りのことが起きているというよりも、彼が本能的に望んでいるものが意識的に理解できてそれを自身の望みであると思っているというのと、人を正しく管理し続けるというこの施設の相性がとても良いということなのだろう。
それでも彼は自身が自由に振る舞っていると感じているし、傍から見ても彼は自由に見える。
しかし、もしこの施設のルーチンが何らかの影響で狂ったりしたら、彼自身の要求が何らかの影響で変化したりしたら、彼は自分の望み通りにこの施設が動いていたわけではないということを知るのだろう。
そうなることを僕は望んで、彼の前に姿を表したのだ。
しかし彼がもしこのタイミングで友人を望んでいたとしたら、それは彼の望み通りに世界が動いたということなのだろうか。
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