第1880話:レウア・フオフト~黄昏に囚われて~
この町はいつも夕方だ。
海に面した丘にある町で、この町に夜は来ない。
常に海の向こうに日が沈みそうな時間のまま止まっている。
赤い夕陽が常にこの町を照らす形になっていて、黄昏の町と呼ばれている。
この町にとどまり続ける人は稀で、大抵の人は何かしらの不調が発生してこの町を去っていく。
そんな状態だから、町は空き家だらけで近所の人は全員顔見知りだ。
町を出歩いてすれ違うのは明るい顔をした観光客と浮かない顔をした近所の人間だけ。
この町に住んでいる人は皆そうだ、私だってそう。
夜は来ないため、それぞれが適当なタイミングで睡眠をとり、日光で時間がわからないので起きた時にどれだけ眠ったのかがぱっとわからずに不調になってしまう。
去る人はその感覚に耐えられずに去ってしまい、今住んでいる人は不調が発生しても住み続けているだけなのだろう。
何らかの理由でこの町に来て、何かの理由でこの町を去ることができなくなってしまった人達。
それはきっと私もそうで、きっと死ぬまで私はこの町に居続けることになるのだろう。
他の人たちの事情は知らない。私も触れないし、他の人も触れない。
永遠にこの夜も来ない、昼にも戻れない、半端で特別な時間が永遠に続く町で一生を過ごす。
黄昏に囚われ続けている者達。
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