第1822話:ナリン・アコ~成り代わり~
最近知り合いの様子がおかしい。
昔の思い出がやけに曖昧だったり、名前を呼ぶ前に少し考えるような素振りを見せたり、とにかく彼らしくない。
普段の彼ならば昔の思い出は話題に出せばすぐに乗ってきて話が拡がるものなのだが、最近ではこちらの言うことを反芻するばかりで、彼から昔の話は出てこない。
つまり、彼は恐らく彼ではないなにかに成り代わられているに違いない。
そうなると、残念ながら本人はもう喪われてしまっていると考えるのが自然だろう。
ボケてしまって昔の記憶を思い出せなくなっているという線もあるが、まぁそうなったらそうなったで早々に葬ってやるのが良き友人であるというものだ。
「というわけで、君を殺させてもらう」
「何を、冗談だろ?」
「そうやって昔のことを思い出さないやり取りは変わらないな」
「……ナリン」
「名を思い出すにも少しかかっているようじゃ、ダメだぜ、殺すしかなし」
多少の抵抗はあったものの、殺すことができた。
案の定、何かか成り代わっており、姿が変わり始めた。
ソレは何か植物で編まれた人形であり、もう動かないものだった。
「うわ、何してるんだナリン」
そこに彼が現れた。
言い淀むことなく名前を呼んできて、本人であることが確信できた。
「留守を任せてたんだよ、成り代わりの蔓にさ」
彼が言うには秘密に長期間出掛ける用事があったから代わりの者を自分に見せかけて置いていっていたらしい。
ここ数日の彼はインプットした振る舞いを指定の姿で行う植物だったらしい。
道理で、と納得した上で見立ては間違っていなかったと思えた。
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