第1816話:クーバ・ヒースト~無口~

「無口なんだね」

 よく言われるが、ただ音声コミュニケーションが可能な身体構造をしていないだけだ。

 それこそ、口と呼ばれる器官がない。

 それが特異と見られる環境にわざわざ来ているのだから、言われるのは織り込み済み。

 普段はマスクをして、音は隠し持った機器を使って受け取り自分の解せる形へと変換して受け取っている。

 だから相手の言っていることはわかるし、返答しようと思えばすることもできる。

「喋るの、苦手なの」

 ただ、どうしてもその音声での返答をするための処理に手間がかかるから、会話という物はあんまり楽しむことができない。

 話しかけられたらプリセットに登録してある二、三言は返すものの、楽しく会話というのは難しいものだ。

 今は、周りの会話を聞くにとどめるだけで良い。

 そうして、音声コミュニケーションのレパートリーを増やしていくしかない。

 そうして、いずれはプリセットだけでそれなりの会話が成立するようにし、それに合わせて音声発声に慣れていく予定だ。

 そうなれば、私も音声会話によるコミュニケーションができるようになるだろう。

 私は、それにあこがれて不向きな体であるにもかかわらずこちらのコミュニティに来ることにしたんだ。

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