第1805話:リョーア・ムニ~針山~

「険しい山過ぎるだろ」

「そりゃあな、普通の奴は登らない山だよ。だから俺たちが登るんだろ」

「それはそうなんだけど……それにしてもだろこれは……」

 目の前にあるのは針の山、すべての地面が面でなく点で歩けばどころか立てば体を貫かれて死ぬだろう。

 なぜそんな場所に二人で来てるのかと言えば資源調達のためだ。

 危険な特殊環境下にはその特殊性に応じた特殊な資源が産出し、特殊環境故に回収は危険が伴う。

 その回収を専門に請け負っているのが俺たちということだ。

「ちゃんと準備もしてきたから俺は大丈夫だよ、お前だってちゃんと準備してるの知ってるんだよ、わざとらしくビビりやがって」

「それはそうなんですけど、やっぱり危険なのに変わりはないから」

「意識はいいよ、そういうのの欠如が油断になって事故につながるんだから」

「でしょう?」

「それはそれとして、声に出してビビるな。「もしかして俺説明し忘れたかな?」って心配になっちゃうだろ」

「すみません」

「まぁ、ちゃんと準備してあるならいいか。行くぞ」

「はーい」


「大丈夫か?」

「大丈夫っぽいです、あんなトレーニングでこんな針山を歩けるようになるんですね」

「実質身体改造みたいなトレーニングだからな、お前はあんなって言うけども、普通はあのトレーニングを収めるだけでも死ぬこともある」

「またまたぁ」

「いやほんと、そうでなければもっと人数いるよ俺たち」

「ほんとかなぁ」

 思い返してみても足つぼマッサージみたいなのを延々していた記憶しかない。

 それでも足の裏に針は通らなくなってる。

 靴はボロボロになるからと裸足で歩いているにもかかわらずだ。

「さて、この辺りだな。気を抜くなよ」

「針は抜いてもですか」

「刺さったのか?」

「いえ、全然?」

「そうだな、さっさと集めて降りるぞ。帰りは荷物分負荷がかかるんだから、余力を残しておかないといけない」

「そうですねぇ、全身ぶすぶすは嫌ですから」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る