第1785話:ヒープル・ケウ~追跡者~

 そんなバカなことがあるか。

 追っても追っても逃げられる、気づけば世界は形を失い、今は過去、未来は今に、過去は未来に目の前に俺がいる、俺の場所に俺はいない。

 そんな人の理の通じない場所まで逃げられた。

 そんな場所においても何とかやつを認識し続けることはできているが、それも本当に正しく認識しているのか、ただ見たいものが見えているのではないかという疑念が付きまとう。

 今までどんな相手でも必ず追って捕まえてきた。

 そんな俺が、ついに追いつけない相手が現れた。

 それは俺の終わりを示しているのと同時に、絶対に逃がしたくないという強い気持ちが湧いてくる。

 これ以上に逃げられたらもう追いかけられないという諦めもあり、これ以上逃げられたらもう人間やめてるぞという逃げないでくれという気持ちもある。

 頼む~頼む~と祈りながら追いかけていると、奴は唐突に方向を変えた。

 いや、今までも方向を色々変えながら逃げてはいたんだが、逃げ方を変えたといった方がいいか。(そもそもこの辺りでは方向も何もないが)

 向かっている方向は、まだわかる方向だ。

 さすがのやつもこの辺りで逃げ続けるのは無理だと判断したのだろう。

 これでまた、常識の範囲内での追跡ができる。

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