第1786話:ペルシ・フショー~定められた道~

 皆が並んでいる。

 昼飯を食べに入った食堂で、長蛇の列ができていた。

 この店に入ったらまずはここに並ぶ必要があるらしい。

 ならば並ぶしかあるまい。

 結構な人数が並んでいたが、俺と同様に初めての客で前の方の様子を伺っている人が何人かいた。

 それ以外にも何人か少し焦っている人もいる。

 限定メニューの売り切れを懸念しているのだろうか。

 案外早く列は捌け、自分の番が来て並んでいたことが無意味だったことがわかった。

 この列はトイレの列だった。

 先を伺っていた人はともかく、焦ってる人はトイレに行きたくて並んでいたんだ。

 つまり、なんの列なのかを考えていればこの列に並ぶ必要はなく、今頃座って料理を食べていたことだろう。

 ともかく、順番がきたので席に座って注文をする。

 この時、もう少し考えてさえいれば再び列に並ぶことにはならなかったのだが……先の失敗とようやく順番という安心感で油断していた。

 そもそもなぜトイレの列が受付の列と勘違いするほどに長くなっていたのかに思い至ることができなかったのだ。

 この店では食後に高確率で唐突な便意に襲われて皆がトイレの列へ加わることになるのが標準であるなどということは、本当に思いもよらなかったのだ。

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