第1784話:レービィ・リック~逃亡者~

「世界の果てまで逃げるとは言ったものの……」

 常に人に狙われるような形になっていて、逃げ脚だけは自信があった。

 その結果、本当に世界の果てまでたどり着いてしまった。

「どうなってやがるんだ……」

 世界の果て、人間が認識している概念の輪郭も失ってきた世界。

 そんな場所まで逃げてきたというのにまだ追われている。

 概念が失われても、なんとなく自分を狙う気配という物は感じる。

 まだ逃げなければ、しかしどこへ?

 ここは世界の果てで、ここよりも先など存在しない。

 時間も空間も意味を成さない場所だ。

 今は追いつかれてはいない、同時に追いつかれている可能性も存在する。

 世界の果てまで逃げたのは失敗だったかもしれない。

 感覚が鈍るというか、意味を成さない。

 これでは逃げきれない。

 ここまで追いかけられない奴らはもう完全に撒けたはず、そうならば追ってこれている奴はほとんどいないはずであり、完全に推測できない場所に戻れば今追ってきているやつだけになる。

 それならば感覚が信用できる場所の方がまだましだ。

 こんな、わかるんだかわからないんだかわからないところにいられない。

 すぐさまに逃げねば……

 全てから。そう、全てから。

 誰も追いかけてくることのできない場所ではなく、誰が追いかけてきても逃げられる場所まで。


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