第1783話:レタ・ルーテ~やる気はある~

「やる気はあるのにどうしてそうなるかなぁ」

「なんででしょうね……?」

 とても不思議な話をしている。

 やる気はあって、まじめで、当然のように努力もして、決して怠惰でもない、それなのにどうしてか技能の向上が見られない。

「不思議だよなぁ……」

「不思議ですね……」

「漠然と作業をこなしているわけでもないし、なんなら復習もしているし、他の人よりも気を付けながら仕事してるのになぁ……」

「向いてないんですかね……?」

 まぁ、そういう結論になるよなぁ……

 俺だってそう思うもん、絶対に向いてないって。

 ここまでまじめで努力家で手を抜くなんてことを知らなくて、真摯に物事に取り組むいい子が、こんなに単純で簡単な作業をするのにものすごい時間と労力がかかるなんて、それは間違いなく何かがおかしい。

 根本的に彼女の持ち合わせている要素の何かがこの作業に全くと言っていいほど向いていないのだろう。

「そうなのかもしれない」

 そう俺の口からはっきりと伝えると彼女は泣いてしまった。

 まぁそうなるよな……

 でもこんだけまじめにやってきて、向いてませんってはっきりと言われてしまったら、本当に悲しくなるだろう。

 しかし、俺も採用の時点で気づくべきだったのだ。

 彼女のような、手がめちゃくちゃでかい種族にこんな繊細な作業を要求するなんて不可能だってことを。

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