第1762話:ケレビ・ホルー~角~

「うう……頭が重い……」

 昨日のみ過ぎたのか、それとも酔って覚えてないだけでどっかにぶつけたか……

 いや、でもこの頭の重みはそういうのとは違う気がする……?

 そう思いながらも重い頭を持ち上げて、鏡の前まで移動する。

「あー、忘れてた……」

 鏡に映る自分のいかにも不調だぞという顔、その上に視点を移すと、そこには大きな角が生えていた。

 奇病ではない、ただそういう時期だというだけだ。

 覚えていたなら昨日こんなになるまで酒を飲んだりはしなかったんだが……

 ちゃんと管理できていれば根元から切っても痛みもなくどうとでもできるのだが、前日に深酒をした翌日に生えた場合は話が別だ。

 詳しい理屈に関しては自分の身ながら詳しくはないんだが、血管やら神経やらが角に通ってしまって切れば痛いし血も出る。

 そうなってしまうと痛みに耐えて無理に切るか、次の生え変わりの時期に落ちるのを待つかしかない。

 そして、そうなってしまったわけなんだが……

「頭が重いのが久しぶりすぎる……」

 いつもはちゃんと気づいて飲酒を控え、翌日には切ってしまうのでここ数年は角がある状態で生活をしてこなかった。

 そして、無理に切るのは本当に痛いし、血を止めるために焼きごてを当てることになってしばらく火傷が痛むからやりたくはない。

「しばらくがんばるかぁ」

 頭は重いがしばらくしたら慣れるだろうと、角を切らずに生活をすることにしたが、やはり結構な問題が発生する。

 いろいろなところにぶつけるし、道で人とすれ違う時の距離感がいつまでたってもわからないし、知人には「なんで角切ってないの?」と馬鹿にされるし!

 もうしばらくは他人から離れた場所で暮らした方がいいかもしれない。

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