第1750話:ケーヴィ・グル~墜ちる彗星~

「あれ、もう彗星の時期だったっけ?」

 数千年に一度空を割く彗星、この世界にはほとんど存在しないレアな天体の一つであり、地と天を縫いなんやかんや大きな事件が起きたりする、大きな季節を告げる風物詩みたいなものだ。

「いや、ついこないだだったろ、今はまだ大地の裏側を廻っているはずだ」

「じゃああれはなんだ?」

 指を指し、今まで目を閉じて受け答えをしていた彼に見るように促す。

 彗星が、今、空を割いていた。

「……まてまて、確かあの彗星は青かったはずだ、この星は赤い」

 赤い、赤い尾を引きながら、空を二分するそれは、いかにも凶兆であり、いくらかの世界を終わらせていそうな様相で、確かに記憶にある数千年に一度訪れる彗星とは別物のような気がしなくてもない。

 あちらは災いももたらすが、幸福ももたらすものである。

「確かに別物だ。なんらかの影響で変質したか、新たな彗星が生まれたか」

「なんにせよ大規模な変化だ、影響は慎重に量らねばならないな」

「ん、ちょっと待て。あの彗星、落ちてきていないか?」

「気のせいじゃ……なさそうだな。間違いなくこちらへ向かって落ちてきている。もしやそういう生物か?」

「ならば影響も何もないな、この場で仕留めてしまおう」

「うむ、そうしてしまおう」

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