第1751話:ピヤ・クイル~機械の言葉~

「旅の人、よくおいでくださいました」

 旅の途中、少数民族の村に遭遇したので一晩お世話になることになった。

 その村は外との交流がないわけではないものの、その村本来の文化を色濃く残す形で存在しており、まぁ言ってしまえば文明レベルが低い。

 そういう村に滞在するのはいい経験といえるだろう。

 そんなこんなで歓迎の宴に迎えられていると『ピピーピーピー』という電子音が聞こえてきた。

 気になって音の出所を探すと部屋の隅に置かれた文明レベルに似つかわしくない機械たった。

「あれは……」

「あぁ、あれは以前にこの村に来た行商の者が置いていった空気の穢れを払う置物です。ですが最近あのようになにかを伝えようと声をあげるようになりまして、しかしこの村にはかの言葉を解する者はおりませんので、心苦しながらも放置するより他ないという状況なのでございます」

「なるほど……」

 まぁ、大体何の主張なのかは想像がつく。

 その機械の側面に刻印された番号を調べて説明書を探しだし、この電子音のパターンが何のメッセージなのかを調べる。

「こういうときはここを開けて、中のこのフィルターを掃除してやるとこいつも満足して黙りますよ」

「なんと旅の人は彼の言葉がわかるのですか」

「まぁ、言葉がわかるっていうか、だいたいは」

 説明書を探して何のメッセージなのかを調べるだけなのだから、やり方さえ覚えてしまえば誰にだってできる。

 この場合、どうするのが正解だろうか。

 そう考えて、後日言葉の翻訳書として説明書をプリントアウトして送ることにした。

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