第1708話:レイプル・シギット~声の届く範囲で~

「自由行動!!!」

「おいおい、はしゃぐのもいいが、ちゃんとルールは守るように。あくまで自由行動といっても、声の届く範囲での話だ」

「わかってますよ、声が届く範囲ですよね!!!」

「ああ、わかってるならいいんだ。行ってこい」

「はーい!!! 行ってきます!!!」

 そう言って、ものすごい勢いで走り去り、瞬くまでもなく見えなくなった。

 元気で真面目だが落ち着きがなく破天荒、そんな言葉で形容される彼を連れ出して自由行動時間を与えれば地の果てまで走っていってしまうのは目に見えているわけで、まじめな部分にアプローチすることでどうにかしてストレスを賭けることなく彼を制御できないかという実験だ。

「一応まだ声が届きそうな範囲か……」

 彼に取り付けた発信機の反応を見れば彼は声の届く範囲というのをどう解釈したのかがよくわかる。

 この距離であれば、限界ギリギリまで声を張り上げればかすかに届く、聞こえないことはないがよっぽど注意を向けて聞かねばなんと言っているのかわからないであろう距離。

 声の届く範囲っていう指示はミスだったかもしれないな……

 次は目の届く範囲でという指示にしてみるしかないだろう、それで彼が自由行動だと思ってくれるかは甚だ怪しくもあるのだが……

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