第1695話・:ミルコ・レリオ~髪~

「髪、ずいぶんと長いですよね」

 彼は私の足首ほどまである長さの髪を指してそう言った。

 ああ、最近は他人と比較するという感覚を失っていたから、そう言えば私の髪は長く感じるものなのだと思い出す。

「えぇ、生まれてからずっと切っていないので」

「ははぁ、それはなにかのおまじないで?」

「ん? いやそう言うことではないよ。単純に前の人生では髪を伸ばす自由がなくて、この世界では自由を謳歌して好き放題伸ばしたくなっただけ」

「それにしても伸ばしすぎでは?」

 確かにそう、実際は腰辺りの長さまであればよかったのに、気づけば切るタイミングを逃して足首の長さまでになっていて、ここまで伸ばすともう切るのがもったいなくなってしまってずっと育ててるのだ。

 地面に擦るようになったらさすがに切ろうかとも考えてはいるが、切手どの程度の長さにするかはまだ考えていない。

 バッサリと短髪にするのも楽しそうだが、ここまで伸ばした長髪がもったいない。

 そうだ、結えばもう少し長くしても地面につかないようにできるのではないだろうか。

 そんなことを考えて、切らない言い訳として出てくるのが「ここまで長いと色々遊べて楽しいから」でしかないのは、なかなかに苦しい気がする。

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