第1693話:ミ・スールスク~温泉旅行~

「いやぁ温泉はいいねぇやっぱり」

「しかし、確かに温泉といえば温泉だとは思うけど、なんか知っている温泉と違う気もするんだよなぁ、これ」

「どう違うんだ?」

「温かい湯ではあるが、これは水道水じゃないか?」

 この辺には温泉が湧くような地下水脈はなかったはず。

「? まぁ温泉ってそういうものじゃないか」

「いや、まぁ定義にもよるけど、水道水をただあっためただけだと、ただ風呂って感じじゃないか。やっぱり自然に湧いた水が地熱とかであったまってる方が温泉じゃないか?」

「あー、そういうものか。でもこの温泉、遠くの山で湧いた水を転送してきた水道水をこの辺の地熱で温めなおしたものだよ?」

「ん、んん?」

「この辺で使われている水道水という意味では水道水だけども、実際は湧き水だし、地熱であったまったものだし、君の言う温泉とどう違うんだい?」

「んんー? ちょっと待って?」

 えーと、湧き水を持ってきて地熱で加熱したもの?

 それだとどうなるんだ。

「いや、たぶんそれも違う気がする。実際に地下水脈の時点で加熱されてることが重要だと思うんだよな、たぶん。定義もいろいろあると思うけど、私の中ではそう」

「あいまいだなぁ、俺としてはどうだろうと違いはないし、これも温泉でいいよ」

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