第1692話:テイプ・イクチオ~生まれながらの~

 私は生まれながらにして王になることが定めづけられていたものだった。

 生まれが王家で第一子というだけではなく、生まれながらに聡明でカリスマを備えており、将来を期待された教育を施された。

 そしてそのまま期待通りに成長し、期待を超えた王として君臨した。

 それは道が敷かれていて、その道を踏み砕きながら全力で進むだけでよかったのだと今になれば思う。

 この世界では素養経験はそのままなものの、目の前に道はなく、追い抜くべき背中というものも存在していない。

 しかし、やはり私は生まれながらにして王になるべき存在であるのだろう。

 この世界でも持ち前のカリスマでしもべは数多くできた、統治する国家こそないものの、いつでも国を興せるような準備ができているといえる。

 しかし、国を興すようなことはまだしない。

 人も武力もこの世界では常に未知が存在するからだ。

 すべてを把握したつもりになっていても、新たに滅びた世界からいつどんな技術を持ち込まれるかがわからない。

 そんな世界で国を興して統治し続けるのは現実的ではないのだ。

 そもそも戦国の世でもないのだから、そういうことを気にする必要はないのだろうが、どうしても気にしてしまう。

 王になるのも、タイミングが重要だからな……

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