第1670話:フチドック・フシギル~出遅れ~

「んうぇ!」

 朝目が覚めると昼だった。

「え!? あれ!? なんでだ!?」

 寝坊だ、今日は午後からといえ外で予定がある。

 午前中にする予定だった個人的な用事をすべて後に回して出かける用意をする。

 寝巻から着替えて最低限の身だしなみを整え朝食基昼食は即効性エネルギージェルをズゴゴと吸い込んで済ませる。どうせこの後軽食屋に入るんだ、本格的な食事はそこですればいい。

 どかどかと走りながらそれらをすべて一息で済ませ、家を出る。

「行ってきます!!!」

 誰もいない家に向かってそういって、さっとカギをかけたことを確認して待ち合わせの場所までダッシュする。

 時間はまだあるにはあるが余裕はない、本当はもっと余裕をもって出る予定だったんだ。

 このままでは予定の時間ちょうどの到着になってしまう、しかもそれはすべてがうまく運んだ場合の到着時間だ。

「間に合え……!」

 今までにないスピードで走る、全力だ。

 全力で走るのはいつ以来だろうか、このまま体力は持つだろうか。

 大丈夫だ、なんとかなる。

 そのまま走り続けてあと少し、あの角を曲がれば待ち合わせ場所だ。

 時間までもまだ少しある、何とか間に合ったようだ。

 そう気を抜いて曲がり角に差し掛かった時、脚が止まった。

 遅れて、激痛。

 動けない、神経を痛みが支配して、声も出ない。

 慌てて走りすぎたのだ、回復も間に合わないだろう。

 もう少し早く出ていれば回復していても間に合っただろうし、何よりこんなことに放っていなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る