第1669話:アルヴェ・ウォーン~遺伝~
「先生のその傷は遺伝ですか?」
「いや、この傷は昔ちょっと通り魔にやられてな。それに傷は遺伝するものじゃないだろう?」
「いやや、遺伝しますよ。例えばこの傷は遺伝なんです」
「ん、それはこないだの火傷じゃないか?」
「そうですが、私は父もここに同じ火傷をしているんですよ。だから、これは遺伝した傷です」
「んんん? いや、その理屈はおかしいんじゃないか、ただ偶然同じ場所にやけどをしただけでは遺伝とは言わないはずだ」
「もし、この火傷が祖父にもあると言ったらどうです?」
「つまり?」
「祖父のまた祖父にも、同じ傷はあり、さらにその祖父にも、遡る事12代前の祖先の話です」
「ほぉ」
「彼は、魔の物との戦いの末期に生まれ、戦いに終止符を打った者でした。最後の魔を滅ぼした彼は、二度と戦えないように腕に呪いを受けたのです」
「それがその火傷?」
「そういうことです、この呪いは彼の子、そのまた子、さらに子、子々孫々と同じ場所に火傷を負わせ続けてきました」
「それにしてはその程度の火傷って、かなりしょぼくない?」
「12代の間を継がれてきた結果、かなり軽減されたっぽいですね。一応、前の世界でも同じ火傷を負ったんですが、その時はもう少しひどい火傷でしたよ。聞くところによれば祖先は腕を丸々一本焼けて失うほどだったとか」
「しかし、それは遺伝っていうのかなぁ……」
「遺伝ですよ遺伝」
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