第1654話:ニュルジ~神々の土地~

「ここが神々の土地……」

 僅かな伝承を頼りにたどり着いた場所、そこはこの世界に来た神々が住むという。

 そこにたどり着いた人間は、神に気に入られることで、神の加護が与えられたり、自身も神に昇華することができると言われている。

 そんな場所を目指していたのは当然欲に駈られてのことで、本気で探してはいたものの本当に見つかるとは思っていなかった。

 さて、その地に着いたからにはあとは神々と遭遇して加護を授かるなり、神へと昇華させてもらうなりしてから帰りたい。

 この地に住むのも良い。

 そんなことを考えながら散策すると人影が見えた。

「第一神発見!!!」

「うわ! なんだい!?」

 おっと思わず気持ちが昂ってしまい、叫んでしまった。

「どうも初めまして、ここに住まう神の方ですか?」

 神とのファーストインプレッションだ、礼儀正しい姿を見せよう。

 印象は良いに越したことはない、叫んだのは向こうも怯んだし、なんとか上書きできる範囲だろう。

「あ、あぁ、僕は特にどこの世界の第一神でもないが……ここに住んでいる、神だよ」

 マジだ。

 マジで神を名乗るものだ。

 本当にたどり着いたんだ!

「あの、お願いがあるのですが!」

「なんだい?」

「加護を授けてはいただけませんか!」

「加護? 加護……」

 なんだか思い当たるものが無いみたいな素振りをされる。

「あー! わかったぞ! 加護ね、加護。なるほどなるほど、わかったわかった」

 なにか得心がいったようだ。

「ごめんね、なにか期待して来たようだけど、この世界では僕らは君たちが思うような力は持っていないんだ。なにせ、この世界のの神ではないし、死んだ神だからね」

「そんな……」

「でも、ここはいいところだから! 気が済むまで堪能していくと良いよ! なんたって神々が暮らす土地だからね!」

「……ですよね!」

 こうなったら、堪能するしかない。

 そして、この経験を出版して売りだそう。

 もし見つからなかったときは、そうしようと思って記録をつけていてよかった。

 なかなか良い数売れそうな気がする。

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