第1639話:ベニー・テイフティ~繊維~
「この糸束、なんだ?」
「糸束は糸束よ。わかってるじゃない」
「いや、なんでこんなところに置いてあるのかなって思ってさ。お前別に裁縫が趣味とかじゃなかったよな?」
「それはそうだけど、別にそういう趣味じゃなくても糸束があってもいいだろ?」
「まぁ、いいけどさ。裁縫が趣味じゃないなら、なにに使う糸束なんだ? 見たところ普通の糸に見えるけども」
「まぁ、普通の糸だからね」
「何に使うんだよ」
「あるだけだよ、使う予定なんてない」
「いや、使う予定のない糸束なんてふつう持ってないだろ。もらったとかなのか?」
「ああそうだよ。もらったものだ。どうしたものかと思ってそこに置きっぱなしにしてあっただけだ」
「へぇ、ふぅん、台所に」
「……! そうだよ!」
「そうかそうか、ところで前に買っていた塊肉はもう食べたのか?」
「……まだ食べてない」
「そうかそうか、漬け込みの具合はどんなもん?」
「……そろそろだよ。食べていくか?」
「もちろんさ! 最初から言えばよかったのに、あの糸は肉を漬けるのに使ってるってさ。そしたら一切れ二切れ出して残りはこれだけって言えば済んでたろうに…… つまらないウソをつくもんだから」
「言ってても全部持ってかれたような気がしてならないんだよな……」
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