第1638話:シシド・イヴァン~閉じるまであと少し~

「今、大丈夫か?」

「わからん、わからんがここでぐずぐずしているのもまずいのは確かだ」

 時間がない。すでにこの一帯は閉じようとしている。

 そして問題は、ここの最奥で見つけてきた秘宝を狙って襲ってくる奴らがその辺で俺たちを狙っていることなんだよな。

「しかし、なんでばれたんだろうな。ここに秘宝を取りく行くってこと。そもそもここの遺跡とか誰も知らないはずだもんな?」

「それは、お前がいろんな人にべらべらと今日この遺跡に探索に行くことをオフレコとか言いつつ喋り回ったからだろうが!」

「まさか誰かが聞いているとは……、さらにそれがこんなごろつきの方まで流れていくとは……」

「どうするんだよ。完全に閉じる前に出ないと出られなくなるんだぞ」

「急がないとなぁ、しかし無策に飛び出せばハチの巣だ」

「お前が囮になって、そのすきに俺が秘宝をもって脱出するっていうのはどうだろう。タイミングが良ければ追ってくる奴全員が閉じた中に閉じ込められて安全に帰ることができると思うが」

「それ、俺は死ぬ奴では?」

「そうだよ、お前が集めたんだから、責任もってお前が集めておいてくれ」

「どちらにせよ、もう隠れているわけにはいかない時間だなぁ。タイミングをずらしてダッシュだ!」

「お、おいマジで行くのか」

「もう閉じるからな! 何とかなるように祈って走れ! お前も」

「仕方ねぇ! 外で会おう」

 タイミングを見て、こっそりと飛び出す。

 なんとか誰にも気づかれないように外まで抜けられるといいが……

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