第1625話:シチル・ボルイド~消し炭~

 おいおいおいおい、これはなんの冗談だ?

 目の前には今の今まで生きていたやつが消し炭となって転がっている。

 なぜなんだ……

 どうしてこんなことになってしまったんだ……

 彼に火を与えてしまったのが間違いだったのか……

 しかし刃を持たせるのも不器用だと被害が大きそうで、火を扱わせてしまったんだ。

 その結果として用意した活きのいい魚は消し炭になってしまった。

「何で最大火力でじっくり焼いたの?」

 料理の分担ってこんな片方が料理できないと事故るんだね……

「熱を加えた方がしっかりおいしくなると思って……」

 なるほど、一応理屈があるうえで超加熱黒焦げ消し炭にしたということか……

「料理には最適な加熱具合というのがあってね……」

 彼の出身はそんなに加熱すればするほどいいみたいな価値観だったのだろうか。

 確かによく火を通した方がいい食材はあるし、いくら加熱しても大丈夫な食材というものもある。

 でも魚はそうじゃないんだよなぁ。

 加熱するなんて簡単だとは思ったけど、意外とそうじゃなかったらしい。

「次は包丁の方を任せるから、気を付けて扱ってね」

「頑張るよ! 刃物は使ったことあるからね」

 最初からこっちを任せておけばよかったかもしれない。

 安心して次の魚を用意して火加減の方を調整しようと目を逸らしたすきにまな板が真っ二つになっていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る