第1624話:イチトメ・フラット~埋め込み金属~

 気になっていることがある。

 俺の生まれ育った世界では、生まれるとすぐに体の中に金属片を入れる。

 これは個人が生きた証として、永遠に残るものを個人の肉体に帰属させることが目的で埋め込まれて、死後は遺体を焼いて肉や骨を全て灰に返した上で、その金属片を墓棚に並べるという形で保管される。

 当然、俺も前の世界でその様に供養されたはずなのだが、気になっているのは今のこの体にその金属片が入っているかどうかだ。

 まず、体のどこに金属片が入っているかはわからない。

 人によって埋まっている場所は違うし、埋めたときはまだ物心つく前だし、取り出されるときは死んだ後だ。

 だからみんな自分の体のどこにその金属片が入ってるのかは知らない。

 というか、誰も気にしないのだ。

 この世界に来て、今もこの体には金属片が入ったままになっているのだろうかと気にしなかったらそもそもその金属片は体のどこに入ってるんだ? と気にすることもなかっただろう。

 そうして気になりすぎた俺は、同じ世界の生まれの全く知らない人の葬式に参列した。

 俺の体のどこに金属片が入ってるかは重要じゃない。

 入ってるか、入ってないかが重要なのだ。

 だったら、同条件の人の中に入ってるかを調べるのが一番手っ取り早いだろう。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る