第1622話:クルエ・チルチル~おもちゃの武器~
「お前、寝ぼけてるのか?」
大型の魔物を討伐するために組まれた即席パーティ。
その中の一人の持ってきた武器が、正気とは思えないものだった。
「もちろん正気さ。僕はかつてこれで邪竜ウグスルオルゴブだって屠った」
知らん。
竜というからには強かったのだろうが、俺は竜には疎いんだ。
「まぁ、不安なら君たちだけで頑張ってくれ。報酬も僕が役に立ってないと思ったら分けなくてもいいよ」
言うじゃないか。
そう、彼が持ってきた武器は刀。
それもただの刀ではなく、よく見かけるものと比べると半分ほどの長さしかなく材質も金属ではない、刃に至っては見てわかるほど丸い。
試してみなくてもわかる、おもちゃの刀だ。
振っても切れず、叩けば折れることは容易に想像ができる。
そんなおもちゃを持って招集に応じるとは、何ともふざけたやつだ……
現場に到着して戦闘が開始された。
おもちゃを持ってきたやつは少し距離を取った場所にいる。
何が役に立つだ、見学しに来たぐらいで言っておけば文句も言われなかったろうに。
他のメンバーだけでも特に苦戦はしないからいいが。
「ぐぁ!」
おっと、よそ見をしてる間に一人が吹き飛ばされて……る?
魔物の方を見ると、体が先ほどまでの倍ほどに膨らんでいる。
「第二形態があるタイプのやつかよ!」
「強すぎる、いったん引いた方がいい」
パーティメンバーは口々にそう言って警戒しながら引いていく。
そして、おもちゃを持っていたやつだけが逃げずに残った、やっぱり寝てんのか?
「よくここまで削ってくれたね、あとは任せて」
そういっておもちゃの刀を振るう。
パンッという刀を振りぬいた音でもプラスチックでたたいた音でもない破裂音が響き、魔物の頭はなくなっていた。
「サボっててごめんね、僕は一撃で武器を壊しちゃうから。とどめがさせる状態までみんなに持っていってもらいたかったんだ」
いわく、何を持っても変わらないから棒状の安価なおもちゃを使っているということだ。
最初からそう言ってくれればもっとやりようはあったろうに。
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