第1617話:ミケシさん~ただ付いてくる怪~

「さて、確保できたね。実体がある怪異は捕まえやすくていい」

「これがミケシさんなんですか?」

「まぁ、そういうことなんでしょ、都市伝説で語られている通りの状況で、都市伝説で語られている通りの現象が発生したってことは。都市伝説なんて言う出自の怪しい存在。人として語られていても人の姿をしているとは限らないんだよ。こういう足だけの存在だとしてもね」

 私の話をされている。

 私は夜道を歩く人の後ろをついて歩いていただけなのに、いつの間にかミケシさんという名と姿を与えられていた。

「しかし、確保したはいい物のこれをどうしようか? 会話ができるとも思えないし、捕まえて箱にしまっておく?」

 なんてことを相談しているんだ、やめてほしい。

 私は歩くのが好きだし、人の後ろを歩くことしかできない。

 箱に閉じ込められたら本当に何もできなくなってしまう。

「えぇ、別に害があるわけでもないし、それはかわいそうじゃないですか?」

「でもさ、うろつかれていること自体が問題になってるわけだから、何らかの対処は必要になるじゃない」

「そうですねぇ、どうしましょうか?」

 何とか思いついてくれ~! 私がこのままの生活が続けられるようなアイデアを……

「そうだ、いいことを考えた。用意をしてくるから少し待ってて」

 そうして私を捕まえた片方がどこかへ行って、少しして戻ってきた。

「足音がするのが怖いんだから、足音がしないようにしたらいいんだ」

 そういって取り出したのは静音シューズ、少しデザインは派手ではないが、これを吐くのであれば今まで通りにしていてもよいと言う。

 私としても閉じ込められるのはごめんだから、言われた通りにこの靴を履くことにする。

 うん、少し歩いてみるけど足音はしない。

 自分にだけ聞こえる程度のポサポサという音は聞こえるが、二人は聞こえていないみたいだからいいだろう。

「さて、また何かあったら何かしに来るから、できれば問題とか起こさないようにしていてくれよ。噂の方は適当に処理しておくから」

 と言って二人は去っていった。


 後日「歩き回る派手な靴の怪」として「フススフ」という名になっていたことがわかり、闇夜に紛れやすい色のシンプルな静音シューズをもって二人は再びやってきた。

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