第1493話:リクル・キルト~地続きの冥府~

「ここは……?」

「おや、目が覚めたかい。ここは冥府、俗に言う死後の世界さ」

「え、もしかして死んだ? ていうか二回目? 二回目の死後にも死後の世界があるの?」

「いや君は死んでない、いや実際はこっちの世界に来た時に一度は死んでいるが……ややこしいな。とにかく、君は一度死んだあとは死んでない、ただ冥府に迷い込んできただけだ」

「迷い込んだって、迷い込むような場所にあるんですか」

「ああ、この世界では冥府も地上と地続きなんだよ。よその神話だが、冥府は地下にあるとか言われていた時代もあるしな」

「あぁ、なるほど……」

「だから、生者がこの冥府に迷い込むこともままあるというものなのさ」

「そういうものなのですか……、でも僕はなぜここへ……?」

「そりゃあ、冥府だからなぁ。何らかの親和性があって、それでいて今現在死にかけているんだろうなぁ……」

「え、もしかしてこのままだと死ぬんですか僕」

「いやぁ、冥府に引っ掛かっただけ運がいいぜ? 目立つ外傷は今は無いだろ?」

「あ、本当だ、別に死にそうって感じはしない……」

「そうだろうそうだろう、今は万全の状態で冥府にいるからな、このまま生者の国へ戻れば無事に生き返るとは違うが、普段の生活に戻れるだろう」

「そういう感じでいいんですか? 死者を返すわけにはいかないとかそういう物じゃ……?」

「いいのいいの、どうせ別に完全に死んだ奴は来ないし、死にかけの奴ばかりここには来るからな。というか、ここに長居すると死が近すぎて冥府の存在意外は死ぬ。死者と違って生者の死体の処理は面倒なんだ、早く帰ってもらった方がありがたいというものなのだよ」

「げ、帰ります帰ります。ところで、今その瀕死な僕の体の方ってどうなってるんですかね?」

「ん、直接私が観測したことはないが、向こうでは今頃瀕死になった君の体が消えて騒ぎになっているんじゃないか? 同一存在が同時に存在することはたぶんできないだろうから……」

「それなら、まぁ変な鉢合わせになることは無いですね、安心して帰れます」

「この冥府の場所は地上で言えばこのあたりだ、あの道をまっすぐ行きなさい。案内板があるから迷うことはないだろうが、できるだけ足を止めず、振り向かないようにして行きなさい。何があっても戻るということだけはしてはいけない」

「なぜです?」

「習わし、というのもあるが、死に追いつかれないように、そして生者の国から見るこの冥府は昏すぎるからな……。空が見えるところまで出られたら安心だが、それまでは決して、ね」

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