第1492話:シャラリ=リリギル~他人に期待しない~
「人間に期待するのをやめよう……」
「何かあったか?」
私が入り浸っている部屋の主が何やらすべてに絶望したような顔で帰ってきた。
「信じていた人に裏切られたの……」
布団に倒れ込み、くぐもった声でそれだけ返して来た。
「なるほど、それで人に期待しようとするのをやめるって話か。まぁいいんじゃないのかね、人間なんてのはそんなもんだってことが分かってさ」
私にとって人間は最初から期待するものではないと思っていたが、他の人間にとってはそうではないらしいことも知っていた。
彼女はそのまま寝てしまい、それ以上の話は聞けなかった。
「おはよう、朝食の用意はできているぞ」
「え、珍しい。リリギルが朝食の用意をしてくれるなんて」
「そうだな」
どうやら一晩寝て元気になったようだ。
「いただきまーす!」
まぁ、昨日の今日で人間に期待するべきでないということに気づけたとしても、それがすぐに行動に反映されるわけではないということだな……
「ぐわー!!!」
私が用意した朝食はおいしいものではない。
いや、意図してまずい物を朝食として用意したわけではないが、ただ私は料理が得意ではないというだけのことだ。
そして、あまり気にせずにそれを朝食として出す程度には他人に期待しないでいてほしかっただけだ。
ただ、期待しないでほしいと期待している私もまだまだ人に期待してしまっているということだろう。
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