第1455話:カキタビ・ウクルツ~ここへ来て~

「勘弁してくれよ全く」

「いやしかし、まさかだよなぁ」

「ああ、"ここへ来て"ってやつだ」

「いや、本当にね、"ここへ来て"ってやつだね」

「しかしどうするよ」

「さてどうしようか」

 迷い混んでしまった巨大迷路の出口へとたどり着いた俺達は、ここが出口だと言うことはわかっても外に出られないでいた。

「ダンジョンにはありがちではあるけれどもさ」

「あれ、ここって地下だっけ」

「それは知らん、しかしなんともまぁ分かりやすい」

 迷路の出口には犬が居た。

 あれを犬と呼称できるのは武器ではないかと見紛う首輪とそれを出口の上部へと繋ぐ鎖が見えているからだ。

 それほどにその辺で家畜をやってる犬とは規模が違った。

「でも首輪着いてるってことはあれも犬だよね?」

「その理屈はおかしいが、犬と言うことにしておこう。仮に」

「見てよ、鎖が短くてここまでこれないんだよ。あれに似てるよね」

「何に?」

「ほら、庭に繋がれた犬が通行人に襲いかかろうとするけど鎖が短くて届かないやつ」

「似てると言うかそのまんまだろ」

 いや、そもそも犬だとするのが仮にか。

「さて、下らない話はカフェでするとして、どうする?」

「どうするもなにも、行くしかないだろ」

「この迷路の中でカフェをオープンして暮らすって手もあると思うけど?」

「それはない」

「ないか」

「しかし、"ここに来て"なぁ」

「"ここに来て"ねぇ」

 そんなこんなで、うまいことあれを抜ける案が出るまでここから動けない訳だ。

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