第1446話:ピスケ・クルシオ~星外脱出~
窓の外に見える星が赤く燃えている。
つい先日まであそこにいたのだ。
間に合ってよかった。
あのままだったら今頃……
目が覚める。
星の空を渡る船で住んでいた星を出て逃げる夢だ。
この夢を見て起きた時は大抵全身汗びっしょりで疲労感がある。
できれば見たくはない夢だ。
重い体を起こして窓へ向かう。
窓の外は星の海、作られた景色でこの世界にこの風景は存在しない。
この景色は憧れだった。
私は昔、宇宙飛行士になりたかったんだ。
理由は今となってしまえばプロパガンダの成果というほかないだろう。
あの世界ではあの頃、宇宙進出を人類の目標として大きく掲げていた。
数多くの人がフロンティアだと謳われた新天地を目指した。
そして、それは他国に対して優位に立とうとかそういう話ではなかった。
理由は後から知ったのだが簡単に言ってしまえば、星の終わりが近いことが発覚したからだった。
誰かが考えたんだろうか、星が割れようが、それよりも先に宇宙へ逃げ出してしまえばいいって。
それ自体は悪くない考えだと思う。
滅びゆく星から人を逃がすにはほかの世界へ送るか宇宙へ送るかの二択しかない。
あの頃はほかの世界なんていう概念すらもなかったから、実質宇宙へ送るの一択だったと言ってもいいだろう。
そして、私たちが宇宙へ飛び立つ日が決まった。
詳細は省くが他星系まで飛べる人類の箱舟が完成し、私はそれの乗員に選ばれたのだ。
目標としていたパイロット等のようなスタッフではないが、乗員の一人だ。
人類初の他の星への入植者、その一員に選ばれたということはとても誇らしいことで当日までは浮かれて日課のトレーニングを倍に増やしていた程だ。
そしてその日はやってきた。
星の終わりだ。
私が宇宙へと飛び立つよりも先に世界各地で大地から炎が噴き出した。
情報網が生きているうちは状況を集めながら箱舟に向かっていたが、箱舟に辿りつく前に私も地面から噴き出す炎に包まれ、世界は終わった。
あの夢はたどり着けなかった星の海であり、燃える星は世界が滅んでも自分はそこから外れた場所にいるという安心感を得たいという醜さの顕れなんだ。
だから、私はこの夢を見続けるし、窓の外にはあの星が見えない角度の宇宙が広がっているんだ。
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