第1406話:ヒバ・シミズ〜1時間労働〜

「この職場はいいところだな」

「そうか? おれはそうは思わんがね」

「なんたって日がこんなに明るくなってから出勤できて、まだ日がこんなに明るい内に

 家に帰れるんだぜ? こんな環境そうそう無いぜ」

 その言い分は確かだ。

 今時計を見ると4時の表示、いつもここに来る時間の目安は大体3時。

 働いているのは1日の内1時間だけということになる。

「それは真実そうだが、騙されていると思うぞ」

「何言ってんだよ、これで実は翌日の4時だったりしたら騙されてるってのもわかるが来た当日の4時だ。何も騙されちゃいないさ」

「いやしかし……」

 彼が納得している以上問題はないか。

 もとより、辞めたり辞めさせるために話題に乗ったわけではないのだから。


 そして数日後


 さて、今日も1日頑張ったなっと。

「どうした?」

 仕事を終えて帰ろうとしたら何やら騒がしい。

「ちょうどいいところに、これを見てくれよ」

「なになに?」

 見せられたのは時計。

「こないだお前が何かおかしいみたいなこと言ってたから測ってみたんだよ。そしたらさもう8時間も経ってたんだよ! 俺たち騙されてたんだ!」

「なに言ってんだ、最初にちゃんと説明があっただろうよ」

 この工場内は時間の流れが速く、外での1時間が中での8時間に相当する。

「朝は遅く来れて、帰りが早いからここでみんな働いてると思ってたが、違うのか?」

「仕事の時間が1時間だけだったから働いてたんだ」

 しかし、言われるまで気付かなかったんだから別になんの問題もないのではなかろうか。

 抗議しに行こうという気合を高めているが、アホかと言われておわりだろう。

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