第1405話:フェリオ・フォラー~南の島~

「ハッハー!!!」

 夏! 強い日差し、わざわざ飛行機を乗り継いでやってきた南の島! 海で砂浜でバカンスという奴だ!

「急がない、騒がない、テンションを上げない」

「何ぃ? ここは南の島だぞ? テンションを上げないでいつ上げるというのだ、貴様は何もわかってない。なーにもわかってない!」

「うるさいですよ、ていうか南の島の何がいいって言うんですか、常に夏で暑くて草木が茂り続けている、虫が多い、何がいいというのですか」

 何個も重ねて否定的なことを言う奴だ。

「わからん奴だな君も、わからんか? ここはなのだぞ?」

「はぁ? 南の島ですが……どうかしましたか?」

「知っててとぼけているのか、知らずに言っているのか、おそらく無知!!!」

「ひとを指さない、貶さない、つばを飛ばさない!!!」

 あえて反発するように声を大きく張り、言う。

「無知な君に教えてやろう、ここはこの世界で数少ない方角が定められた島なのだ!」

「はぁ」

 思ったより反応が薄くてガクッとなる。

「なんだ、反応が薄いな」

「いえ、そもそも私は南というものをよく知らなくて……」

「ああ、方角が定義されてない世界の出か。つまらん」

 この世界に来てから知ったのだが、方角が厳密に定義されている世界というのは存外少ないらしい。

 それがこの世界で方角を冠する地名が少ない理由らしいのだが……

 逆にここまで南の島らしい南の島に南の島とついているのはそういうことなのだろう。

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