第1393話:リリアリ・カロ―~暗殺~

 スコープを通してターゲットを見る。

 こうやって相手からは自分の存在を気取られない状態で、一方的に相手を見るという状況を幾度も経験してきたがそういう状況だからこそ起きる事故というものがある。

 ターゲットが一人の空間であるがゆえに生じる油断、それに付随して発生する素の顔、人に言えない趣味、大っぴらにできない秘密。

 そういうものをうっかり見てしまうことが多いのだ……


「何をしている……?」

 わずかに開いたカーテンの隙間からちらちらと、見えるターゲットの様子は何か踊りを踊っているように見える。

 就寝前のエクササイズだろうか、それにしては衣装が運動用には見えない……

 光る棒を体中に着けて踊っている。何か邪教の儀式か? いや邪教かどうかは別として何か信奉している宗教にそういう就寝前の舞踊をする教えでもあるのだろうか。

 音が聞こえれば詳細がわかるのだが……

 気になって仕方がない……!!!

 気になって仕方ないが、撃てるタイミングがあったので撃った。

 後日、後始末をするチームにあの時の部屋の状況からターゲットが何をしていたかわかるか?と尋ねたところ、アイドルのライブのビデオが再生されていたから応援のダンスをしていたんだろうとのことだ。

 ターゲットは重要人物すぎて気軽にライブに応援に行ける立場でもないし、私室の中でだけそうしてアイドルの応援活動をしていたのだろう。

 日誌にそれを記して「わかったマーク」をつける。

 あまりついてないんだよなこれ。

 できれば、全部ついている状態にしておきたいんだが……

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