第1339話:ヒパラ・カントス~原住民~

 一人旅をしていたら捕まった。

 未開の部族の村を見つけて無警戒に近づいたのがまずかったと思う。

 実際のところ逃げ出そうと思えばいつだって逃げられる。

 拘束はただのロープだし、僕の携帯端末デバイスは思念起動ができる。

 まぁ、これも経験としてしばらくは捕まりながら観察をしていよう。


「どうしましょう、外の人間ですよ」

「外の人間はどんな技術を持っているかわからない。決して目を離してはいけない」

 そんな会話が翻訳機越しに聞こえてくる。

 こういう部族が外の人間を捕まえた時にする行動はいくつかあるが、技術を受け入れて交易してくれるようになるか、宗教を守るために何も聞かずに処刑するか、それとも神として崇拝されるか……

 まぁ外の人間と認識されていることを考えると神として崇拝ということはなさそうだ。

 警戒っぷりを見るに、前にも外の人間と接触したことがあるのかもしれない。

 それでもこういう生活をしているということは、外部の技術は受け入れないということが分かる。

 まぁ処刑コースなんだろうけど、前が痛い目に遭ったんだろう。

 警戒している間は、手を出してくることはないだろうし、万が一だけどそのまま追い出されるかもしれない。

 それが僕としては一番いいんだけど、そうなってくれるだろうか。


「あー、私達の言っている言葉がわかるかどうかわからないですが、伝わっていると信じて伝えさせていただきます」

「はい、何でしょう」

 ついに話しかけてきたので応える。

「あなたは神様です、あがめさせてください」

 おや、予想外に崇拝というルートに来た。

「いえ、私は神様は無いですよ。外の……」

「ちょっとこちらへ」

 リーダーらしい人が僕を繋いでいる紐を引いて茂みの奥へ、二人で。


「神様ということにしてくれませんか、部族の秩序を守るためなのです」

 流暢な共通語だ。

「外に人はおらず、神の世界であると教え込んで村を保っているのです。私は元々外から来た者なのでわかっていますが、神ということを認めてもらえればすぐにでも解放します」

 なるほど、未開の部族にもいろいろあるんだな。

 結局、神であることを認め、それらしい魔法を1つ発現させて、解放してもらった。

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