第1335話:ヴェイドン・ウルジア~再構築~

「ウレアロウドは滅びたはずでは?」

「そのはずだ、世界の終わりを観測した人間もこちらに来ているし、再興したとしてもそれはもはや違う世界のはずだ」

 話題に上がったのはイレギュラーな転生者だ。

 ずいぶん前に世界丸ごと消滅したはずの世界から来たという。

 イレギュラーな例なので転生卵の特徴や身体構成を念入りに検査され、間違いなく該当の世界の生まれであることが確認された。

「同名の別世界と言う可能性は?」

「無い、完全に同一の世界からの転生者だよ。ウレアロウドには並行世界というのも存在しないはずだ」

「そうなると考えられるのは……?」

「資料によると、彼はウレアロウドの宝暦674年から来たと言う」

「宝暦674年といえば……600年ぐらい前だな。なら簡単な話だ、何らかの理由で転生時期にずれが発生したんだろう、それぐらいならよくあることだ」

「ところがどっこい、600年前の記録を参照すると、この人物は転生してきている。複数回死ぬような者でも、複数回死ぬような死に方でもなかったそうだよ」

「じゃあどういうことだ」

「調査の結果、ウレアロウドは周回世界であることが分かった。滅んだ後、最初からやり直される世界だ」

「それにしては宝暦674年以前の奴が転生してこないじゃないか」

「ウレアロウドは宝暦674年の彼の死のタイミングで始まった世界だということさ。世界5分前仮説という言葉に聞き覚えは?」

「5分前にこの記憶や環境全てがあるままに構成された場合、それに気づけるとか気づけないとかそういう話だろう?」

「まさにそう、ウレアロウドは終わる度に宝暦674年の特定のタイミングで始まるのさ。初期値が同一かどうかはまだわからないみたいだけどさ」

「ループと初期値の2要素を持ってるのか、ゲームの世界みたいだな」

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