第1280話:チ―ティ・イファバリ~不確か存在~

「あれ? 君ってそういう顔だったか?」

 今話していた相手の顔に違和感を抱く。

「うん、さっきまでは違ったんじゃないかな?」

 何を言ってるんだこいつは。人の顔が覚えられない私が言うのもなんだが、何を言ってるんだこいつは。

「あ? なんだお前、顔が変わるっていうのか?」

「そりゃあ」

 そう言って一息を置いた隙に。

「変わるさ」

 また顔が変わった。

「なんなんだお前は」

「何って、よくある不確定存在だよ。よくいるだろ?」

「いや、いないよ」

「いるって、あの人とか、あの人とか、たぶんこの街だと不確定存在の方が多いんじゃないかな?」

「嘘だぁ……」

「本当だともさ、所謂君がモブと認識している彼らこそが、不確定存在と呼ぶべき存在なのさ」

「えぇ……」

「そうだな、例えば君、知り合いだと思っていた人と久しぶりに会った時に「あれ? こんな顔だっけな?」って思ったことはないかい?」

「私は顔の覚えが悪いから、いつもそう思ってるさ」

「うん、それは君が人の顔を覚えられないわけじゃないよ。もしかしたら、そうかもしれないけど、この街には不確定存在が多いだけだよ」

「そうだったのか……」

「うん、そうなんだよ。私はその中でも特に不安定なんだけどね」

「そうだな、今話してるだけで5回ぐらい顔が変わってるよ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る