第1281話:ウナ・ローンⅨ~技術書~
「あれ室長、画面とにらめっこして珍しい。何やってるんですか?」
「んん、ああなに、書類仕事だよ。技術書を書いてくれって言われてしまってね」
「ああ、室長はそういうの苦手そうですもんね」
「なんだなんだ、決めつけおってからに。これでも元は何十という魔術書を作った超筆まめだったんだぞ、ほぼすべて禁書扱いされて封印か焚書されてしまったが……」
「ろくでもないですね」
「いやなに、まじめに書いたものだったんだよ、内容もまともさ。書いた当時はだが……」
「何したんですか」
「何、以前私は暇を持て余して世界の敵をやっていたっていう話はしただろう?」
「確かそんなこと言ってましたね」
「その際に、今まで記述した魔術書の内容を改ざんした、もともと改訂をしやすくするために仕組んだものだったが、世界の敵だし世を混乱に貶めたいな~って思ってさ、気付かない程度に微妙に改ざんしてやった、ちょっとした不具合が出るようにさ」
「ろくでもないじゃないですか」
「仕方ないじゃん、命を狙われてたけど暇だったんだからさ~、世界の敵になるためのいたずらって結構考えるの難しいんだよ~」
「というかそれならまともな技術書を書く能力があるってことですよね、その改ざんの経験で正しい技術書が書けなくなったとか言わないでしょう?」
「さすがにそれは無いんだけど、そもそも当時書いてた魔術書は必要な入力を与えたら定められた結果が出てくるタイプの魔術書だったから、技術書と言うよりも魔術で構成された機械だったわけ、つまり今書いてるわかんない奴に分かるように技術を教える物とは全然違ったのよ。というかそういうものを読み解いて各自で自分で使いやすい魔術を構成するっていうのが私のいた世界での魔術の勉強だったからさ~、しかも私は天才で何でも分かっちゃったからわかんない奴が何がわかんないのかも全然わからないんだよね」
「うーん、絶望的に技術書を書くのに向いてないですね……」
「そうなんだよね、代わりに書いてくれない? 報告書で慣れてるでしょ」
「そうですね、書いてる横で添削をしてくれるなら……」
「よし、じゃあ席交代!」
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